先日に引き続き、同じ人の作品。こっちは映画化するんだったかな
確かに映画化向きの作品だと思う。立ち読みで一気に読んだなぁ
題名
悪の教典
著者
貴志祐介
ジャンル
サスペンス
評価
80点、良作
あらすじ
サイコな殺人鬼である英語教師、蓮見の繰り広げる学園青春サスペンス。
殺人鬼な蓮見が、次々と巻き起こる学園の問題に血と汗でもって応えていく様が描かれている。明るい学級のために粉骨砕身、血も涙も忘れて(というか知らない)蓮見が奮闘するのだが、生徒達の一部はそんな蓮見の正体に気づいて……
感想
まずこれを読んでぱっと思い浮かんだのは酒鬼薔薇事件。もっとも自分は小学生程度だったのでリアルタイムではあまり知らず、後になってちらりと事件のあらましを知った程度。しかしそれでも、他の人とは違うサディズムな感性が殺人にまで結びついてしまうのは衝撃的である。前に感想を書いた新世界よりでも、「悪鬼」という感性のずれた存在が描かれていたが、この「悪の教典」ではそこに焦点を当てるというかその悪鬼こそが主人公になっている。
この小説の蓮見という英語教師は更にサイコな感性を拗らせ、むしろそれを理性的にさえ扱って実社会での問題解決に役立ててしまっているという恐ろしさがある。笑いながら人を殺す姿は背筋がぞくりとした。
題名では悪の教典とある通り、蓮見は現代社会の人類にとってはまさに悪の権化だ。しかし一方で、彼の視点に立って彼の理屈を正しいとするのなら、彼はまったくの正義である。何を書きたいか自分でも分からなくなったが、つまりは相対的に自分でも悪いことをしているという自覚のある犯罪者と違い、自分にとって正しい事をしている犯罪者だということだ。現実には宗教テロなどがこの類例にあたるかもしれないが、普通人では正当化が必要な事柄をあっさりと飛び越えていく恐ろしさが描かれているように感じた。
物語は、あらすじで書いた感じに少しずつクラスの歯車がずれていき、それを取り繕うと蓮見が奮起することから更にややこしくなり、最後は破綻へと向かう。最後の最後は更にぞくりとして、まさしく悪たる悪という存在が描かれていて、一気に読んでしまうほど興味深かった。
面白かったけれども、結構不気味なので80点良作!
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