2012年8月4日土曜日

時砂の王

今日はもう一冊感想かければなぁと思う。一週間続いたのでほっと一息
今回の著者の小川一水さんは、導きの星からのファン(多分)。個人的には風呂敷の広げ方(世界観の構築)には定評があるけど畳み方(締めの展開、オチ)に難ありな印象。でもこの小説は最後まで上手く纏めていると思う。ちなみにハリウッド映画化するとかしないとか、まぁ多分ハリウッドにありがちな映画化の権利だけ獲得して終わりなパターンだと思うが



題名
 時砂の王
著者
 小川一水
ジャンル
 SF、タイムトラベル
評価
 70点、良作

あらすじ
 時を渡って繰り広げられる人類の生存をかけた戦争のお話。
 とはいえ初めから負け戦濃厚で、地球を奪われつつも外惑星系に根城を築いて反撃しようとするところから始める。その一貫として、発明されたばかりの時空転移を使い過去に部隊を送り込み有利に戦争を進めようとする。しかし、同時に時空転移が発明されたにも関わらず、現在の時空で人類が敗北しつつあるのは遠くない未来にこの世界が滅びる(=過去に軍を送れない=今の世界に未来軍が着ていない)ことを暗示していた。
 その未来を変えるべく(というよりは滅びない未来の世界へと分岐させるべく)奮闘するが、そこは流石に人類。滅亡の危機でも主導権争いに終始して失敗を重ねる。
 最終的には戦略を転換し、近い未来から改変していくのではなく遠い未来から虱潰しに時間を防衛することになる。主人公のメッセンジャーO(未来から過去へのメッセージを運ぶものたち)はその方針に反対し、時間を1つずつ戻ることでより多くの人々を守ることを決意する。
 しかし人類に勝利は訪れず、時間軍(勝利を収めた後の世界で創出され、過去へと送られるはずの軍)の創出は行われず終にメッセンジャーOは過去から虱潰しに敵と戦い続けた本隊と合流することになる。
 場所は日本、邪馬台国の時代。人類の天敵との最終決戦が始まろうとしていた。

感想
 どこか悲壮感漂うタイムトラベルもので、結構駆け足というかテンポよく進む。もう少しながければ、歴史を辿っていったのだろうがそういう要素はあまりない。
 とはいえ時を辿り、敵の正体を知ることで少しずつ絶望の戦いであることが明らかになる主人王:メッセンジャーOの足掻く姿や、そんな彼と歩み共に戦うことになる邪馬台国の少女壱与との共闘がメインに据えられていて、物語の流れも(未来→壱与の時代→近未来→壱与の時代2)という如く、交互に描かれている。

 ただ少し腑に落ちないのはやはりラスト。
 ネタバレになるが主人公が死んだ後で、奮起した壱与の元へ時間軍が戻るシーンは中々の矛盾を感じた。説明では戦況が有利に進めば進むほど、未来でも人類が発展し技術進歩が進み最終的には人類軍の創設に繋がるとの事だったが、ラストのシーンでメッセンジャーOが死ぬあたりはとてもじゃないが人類側の戦況は最悪で、時間軍が来なければ敗北必死だったのではないかと思う。
 とはいえ全体としては短い割には纏まっていると思う。ただし前述の感想通り、タイムトラベルものとしてのツボは抑えられてない感じ。


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