前に改めて決意したとおり、星雲賞受賞作を読んで見ることに
日本沈没なんかで有名な小松左京さんの作品。中々好きな作家ですが
正直文章力は大した事ない印象の人
ただし着想力はすごく、こうきたかーっていう醍醐味を味わえる
もちろん素人考えなので、実際には凄い人なのかもしれないと逃げ場を作っておく
題名
継ぐのは誰か
著者
小松左京
ジャンル
SF
評価
70点、良作
あらすじ
チャーリィ―を殺す。
その殺人予告から巻き起こる一連の事件は、次第に人類全体の未来のスケールへと関わり、そして人類の歴史に隠れたもう一つの種族の存在。そして人の未来とは……
感想
割りと夢中になって読んだ後で、こう書くのはちょっと申し訳ないんだけども拍子抜けした。なんというか腑に落ちない要素が多い気がしたのだ。
細かい所では幾つかあるのだが、大きなのはフゥ・リャンという少女の生き方。少し生々しい表現があるのでご了承下さい。
物語始まりの頃には、主人公といい関係になってて物語途上で出来ちゃって、最後には主人公と結婚する。なのだが、彼女は元々他の男に惚れていたらしく、更に最後の辺りではお腹に子供がいる事まで判明する。いや別に、お固い事を言うつもりはないのだが、惚れた相手と断言していて一度生で寝たぐらいには関係があってその上で主人公といい関係になるって心境が意味不明。しかも最終話で産むつもり(これは種族的な意味合いがあるのかもしれないが)ぐらいな相手なのにも関わらず、冒頭時点ではあっさり諦めてる。
加えてインディオとしか交配出来ないはずの種族とちょいちょいやっただけで彼女が孕んだ理由も上手く説明されてないし、人を殺せるぐらいの電撃を使える連中と交わって電気に強い体質で済ますのも意味不明。
てっきり途中で挟んだ、ブッダの頭もホモ・サピエンス・エレクトリクスの長老と同じって所から、旧大陸に残った方の一族の末裔とかそういう風に締めると思ってた。もしかするとそういう風に想像して欲しかったのかもしれないが、それだとすると明らかに説明不足。なんだか面白かっただけにケチがついてしまった気分だ。
とはいえ、物語を通じて語られる新しい人類(作中では古い時代から存在してたのだが)は面白いテーマだ。最近だとジェノサイドなんかがそれにあたるだろうし、猿の惑星なんかもある意味そうかもしれない。それでいて南米の文明の逸話と重ね合わせる点などは、J・Pホーガンの星を継ぐものに近い要素があってぐいっと引き込まれる。
それにしても、改めて考えさせられるのは我々人類が所詮動物、しかしながら偉大な動物だという事だ。新世界からでも思ったが、やはり人間は動物に過ぎない。どんなに頑張っても、食欲、性欲、睡眠欲のような原始的な欲求から逃れられないし、脳内麻薬によってもたらされるご褒美を求めて毎日あくせく働いたり遊んだりするのが関の山だ。しかし一方で、人類ほど繁栄した種族はいない。蟻なんかはバイオマスでは人間に匹敵するが、単独種ではないし、恐竜なんかが世界を支配したといっても支配したのは恐竜を頂点とする生態系だ。
その点人類は圧倒的な地位を占めている。世界をあまねく支配し、圧政を敷き、それでもまだ飽きたらず上を目指す。これほど野心的で成功した種族は先には一つもなく人類だけである。ゆえに人類が後ろを振り返れない。振り返っても前人未到の域に達した人種の未来は見えないからだ。
このあたりのテーマもこの小説に描かれていたが、中盤からは少しずれた感じだったのでちょい残念。総じて思索のレベルは高かったが、小説としての完成度は今一歩だったので70点、良作
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