2012年8月30日木曜日

アキハバラ@DEEP

結構昔に話題になってた気がする本を読んでみた
個人的には秋葉原には余り馴染みがない。小学生時分にカラフルな電球を父と買いにいったぐらいだ。常々行ってみたいとは思うのだが、オタクの町と言われると何だか気が引ける。というほど気難しい年齢でもないので、その内に行ってみようと思う




題名
 アキハバラ@DEEP
著者
 石田衣良
ジャンル
 SF、青春
評価
 80点、良作!

あらすじ
 吃音症だが博識のページ
 女恐怖症だがチャラくてデザインセンス抜群のボックス
 時たまフリーズしてしまうサウンドエディターのタイコ
 天才的なハッカーだがアルビノで外に出れないイオリ
 10年間引き篭もり、今は逆に出っぱなしなダルマ
 そして美少女過ぎて人生苦労してるアキラ

 物語ではこの6人がひとつにあつまり、そして新しいベンチャービジネスを立ち上げ、その敵が生まれ、最後には勝利とそして偉大なる跳躍を経験する事になる様が描かれている。

感想
 いやぁ面白かった。
 最後はもうひと踏ん張り世界がどう変わっていくかを読みたかった気もするけれども、そこは想像にお任せしてるんだろう。うん、ソッチのほうがいいのかもしれない。それに今の世の中だと色々共感するトピックが多い気がする。
 生憎、この物語のように情報生命体やAI型サーチ猿人なるものは現れていないが、SNS主導のアラブの春や逆に著作権問題による締め付けの強化など近いトピックスも多い気がする。
 個人的に一番思ったのは、キャラクターが輝いてるなぁという点。彼らには各々に欠点があるが、間違いなくそれぞれの分野のスペシャリストである。自分はどちらかといえば、器用貧乏な方なので羨ましく思ってしまう。そして欠点がありつつも立ち向かう様は、王様のスピーチ?でもあった通りカッコイイ
 感想が飛び飛びになっているけれども、もう一つよかったのは視点が未来のクルーグ視点から語られているという点だ。開発者の事を父と母と読んだり、その開発綺譚を聖書としたりと妙に人間的でこういうAIばかりなら、人間VS機械(もちろん物語の中だけだが、今のところ)減るのになぁと思ってしまう。
 しっかし、人が人以外とおしゃべり出来るような時代になったら何もかも劇的に変わってしまいそうだ。楽しみでもあり怖い気もする未来に80点!良作。

継ぐのは誰か?


前に改めて決意したとおり、星雲賞受賞作を読んで見ることに
日本沈没なんかで有名な小松左京さんの作品。中々好きな作家ですが
正直文章力は大した事ない印象の人
ただし着想力はすごく、こうきたかーっていう醍醐味を味わえる
もちろん素人考えなので、実際には凄い人なのかもしれないと逃げ場を作っておく



題名
 継ぐのは誰か
著者
 小松左京
ジャンル
 SF
評価
 70点、良作

あらすじ
 チャーリィ―を殺す。
 その殺人予告から巻き起こる一連の事件は、次第に人類全体の未来のスケールへと関わり、そして人類の歴史に隠れたもう一つの種族の存在。そして人の未来とは……

感想
 割りと夢中になって読んだ後で、こう書くのはちょっと申し訳ないんだけども拍子抜けした。なんというか腑に落ちない要素が多い気がしたのだ。

 細かい所では幾つかあるのだが、大きなのはフゥ・リャンという少女の生き方。少し生々しい表現があるのでご了承下さい。
 物語始まりの頃には、主人公といい関係になってて物語途上で出来ちゃって、最後には主人公と結婚する。なのだが、彼女は元々他の男に惚れていたらしく、更に最後の辺りではお腹に子供がいる事まで判明する。いや別に、お固い事を言うつもりはないのだが、惚れた相手と断言していて一度生で寝たぐらいには関係があってその上で主人公といい関係になるって心境が意味不明。しかも最終話で産むつもり(これは種族的な意味合いがあるのかもしれないが)ぐらいな相手なのにも関わらず、冒頭時点ではあっさり諦めてる。
 加えてインディオとしか交配出来ないはずの種族とちょいちょいやっただけで彼女が孕んだ理由も上手く説明されてないし、人を殺せるぐらいの電撃を使える連中と交わって電気に強い体質で済ますのも意味不明。
 てっきり途中で挟んだ、ブッダの頭もホモ・サピエンス・エレクトリクスの長老と同じって所から、旧大陸に残った方の一族の末裔とかそういう風に締めると思ってた。もしかするとそういう風に想像して欲しかったのかもしれないが、それだとすると明らかに説明不足。なんだか面白かっただけにケチがついてしまった気分だ。

 とはいえ、物語を通じて語られる新しい人類(作中では古い時代から存在してたのだが)は面白いテーマだ。最近だとジェノサイドなんかがそれにあたるだろうし、猿の惑星なんかもある意味そうかもしれない。それでいて南米の文明の逸話と重ね合わせる点などは、J・Pホーガンの星を継ぐものに近い要素があってぐいっと引き込まれる。
 それにしても、改めて考えさせられるのは我々人類が所詮動物、しかしながら偉大な動物だという事だ。新世界からでも思ったが、やはり人間は動物に過ぎない。どんなに頑張っても、食欲、性欲、睡眠欲のような原始的な欲求から逃れられないし、脳内麻薬によってもたらされるご褒美を求めて毎日あくせく働いたり遊んだりするのが関の山だ。しかし一方で、人類ほど繁栄した種族はいない。蟻なんかはバイオマスでは人間に匹敵するが、単独種ではないし、恐竜なんかが世界を支配したといっても支配したのは恐竜を頂点とする生態系だ。
 その点人類は圧倒的な地位を占めている。世界をあまねく支配し、圧政を敷き、それでもまだ飽きたらず上を目指す。これほど野心的で成功した種族は先には一つもなく人類だけである。ゆえに人類が後ろを振り返れない。振り返っても前人未到の域に達した人種の未来は見えないからだ。

 このあたりのテーマもこの小説に描かれていたが、中盤からは少しずれた感じだったのでちょい残念。総じて思索のレベルは高かったが、小説としての完成度は今一歩だったので70点、良作






陽だまりの彼女

昨日は忘れたので今日は早めに更新。後2つぐらい
なんでも男の子に呼んでほしいNO1恋愛小説らしい事が帯に書いてあった?
果たして



題名
 陽だまりの彼女
著者
 越谷オサム
ジャンル
 恋愛、青春
評価
 65点、佳作

あらすじ
 ちょっとハチャメチャな中学生活から、普通に高校に進み、普通に大学に進み、そして普通に社会人になった電車好きの青年が主人公。
 彼があるとき仕事先のランジェリーメーカーで、昔馴染みの少女と出会った所から物語は始まる。ありきたりのラブストーリーと思いきや、ちょっとずつ拗れて最後はハッピーエンド

感想
 端的に言えば、あっまあまのラブストーリー。呼んでてむず痒くなるいちゃつきっぷり。
 ちょっとネタバレ入るけど、中学時代にイジメられてた所を助けた男と、十何年もぞっこんで偶然の再開を演出するぐらいベタ惚れの少女のある意味運命的な物語だった。
 あんまりラブストーリーは読まないけど、ま、まぁ、こういうのはこういうのでありだと思う。何だかちょっと欝な気分にならないでもないけど、いちゃついてるのは微笑ましいと思うし。最後の方の少しずつ弱っていく彼女の姿なんかには寂寥感を覚えた

 でもなんだろう。だからこそ最後の結末はなんだかなぁと思ってしまった。
 順調にいちゃつくなかで、ちょいちょい散りばめられた伏線をどう決着つけるのだろうと読んでいたのだが、まぁ後から考えると多少読み込みが甘くて示唆してたことを見逃してただけなんだけれども、それでも最後は猫の恩返しでしたーってのは何だかなぁ。いやまぁ猫っぽいコケティッシュな女の子だなぁとは思わないではなかったけど、本当に猫でしたってのはどうなんだろう。この物語のどこらへんを男の子に読み解いて欲しかったのかも分からん。女の子は実はみんな子猫の1種なんだろうか
 ともかく、読みやすくテンポがよかったけれども最後が腑に落ちなかったので65点佳作!

 てか最近気づいたけど、低い点数あんまり出してないから60点以下意味ないね。実際、文庫化されてるレベルだとそんなにつまらないのないからしょうがないんだけども、これじゃ同じ評価点ばかりが重なって分かり難いなぁ。今後どうするか考え中



2012年8月28日火曜日

三匹のおっさん

昨日読んだ作品。レインツリーの国、フリーター家を買うに引き続き同じ作者の作品
wikiでは大人向けのライトノベルを謳ってる作者さんみたいだけれども
その通りでよみやすい作品が多い。てか女の人なんだなぁ



題名
 三匹のおっさん
著者
 有川浩
ジャンル
 青春!(色んな意味で)
評価
 85点!名作

あらすじ
 定年退職をした還暦の60才の3人の悪童ならぬおっさん達が一応は主役の物語。暇になった時間を使って、町内の治安を守るために立ち上がる3人は培ってきた経験を元に縦横無尽に駆け回る。

感想
 ああ、面白い。そんな印象がまずくるのが本作、昨日書いたフリーター家を買うのような物語の起伏は特にないが爽快でテンポがいいので勝手にページが進んでいく。
 特にいいのは、やはり3者3様でどこにでもいるなぁという格好のおっさん達がメインだから。確かに今時のおっさんは若々しい、というか今の日本は60で高齢者面出来るほど若い国ではない。そしてある意味人生における最後の転機とも言える年代で、ここでどう生きるかで生き様が決まるのかもしれない
 そしてこの作品で描かれているおっさんたちは普通だ。普通に頭が硬かったりするし、コミュニケーション能力に欠けてたりするし、頑固という言葉も似合うだろう。複雑なお年ごろでもある。ただしカッコイイ。
 途中から孫の祐希の視点で語られてたりするが、素直じゃない孫から見てもカッコイイ爺さんだという事は見えてくる。そしてフリーター家を買うや、レインツリーの国でもあったがやはり著者が説いているのはコミュニケーションの大切さ。カッコイイからといってふんぞり返っていてもかっこよくはない。何を書いてるかわからない気もするが、とにかくカッコイイのはカッコつけてこそなのだ。

 改めて考えてっみるとカッコイイというのは、彼ら3人だけではなく巷にも沢山転がっている気はする。自分の祖父も、昔電車に乗っている際に彼自身かなりの年なのに近くで立っていた老人に席を立って譲ったときなどはカッコイイと思ったものである。
 年寄りになっても、そういうカッコイイ人間でありたいと思ったので名作!85点

2012年8月27日月曜日

フリーター家を買う

さっきのは昨日の分という事でもう一冊
こちらもつい最近読了した作品
以前書いたレインツリーの国と同じ作者




題名
 フリーター家を買う
著者
 有川浩
ジャンル
 青春、家族
評価
 85点 名作

あらすじ
 平凡に大学卒業し、そこそこの会社に就職するもそこの社風が合わないと感じあっさり退職した主人公。根気のない彼への世間の風当たりは強く、中々再就職出来ない中で少しずつ意欲を失い、フリーターとして職を転々としながら日々を漫然と過ごしていく。
 しかしそんなある日、母が精神を病んで寝込んでしまう。
 今までずっと家族を支えてきてくれた母の危機に、フリーターは一心奮起して仕事を見つけ、母のために何かしようと決意することになる。

感想
 なんだかすごくリアリティのある話というか、面白かった。
 少しずつ堕落していく主人公と、それで病んでしまう母親、不理解な父親に、嫁いだやり手の姉。それぞれが個性的なキャラクターで読んでいくごとに、ああこういう奴いるなぁと思える程に普通で欠点があってそれでも美点もあるのがよかった。
 物語の展開はものすごくオードソックスだったが、そこに筆力が加わってリアリティのあるものになっている。挫折から立ち上がり、そして軌道に乗り、また家族の縁を繋ぎ直すという一連の展開に何故だかじぃーんとしてしまった。
 全体を通してテンポのいい展開と、わかりやすいキャラクターの織りなす物語はきっと誰でも楽しめる一品だと思う。名作!85点




天冥の標6 宿怨 PART2


昨日更新しようと思ったはずがのびのびに
まずいなぁ
取り敢えず、前も書いた感想のシリーズの最新巻から

 

題名
 天冥の標6 宿怨 PART 2
作者
 小川一水
ジャンル
 SF
評価
 80点 良作

あらすじ
 前作に引き続き、対立の時代から始まる6巻part2。
 スレ違いに加えてコミュニケーション不足、思い込み、相互不理解、そして純然たる悪意が加わって宇宙情勢はめちゃくちゃに。人類を巻き込んだ大戦争と、その影で蠢くELTの姿が少しずつ明らかになっていく

感想
 あらすじがよく分からない事になってしまったが、かなり色々情報が出てくる巻なのでネタバレ放題(まぁ毎回ネタバレ書いてる気はするけども)になりそうなので自重。
 しっかし被害者意識というのはリアルでも厄介なものだけど、こじらせると大変な事になるというのが印象。しかもそこにドラえもんモドキの何でも我儘聞いてくれちゃう異星人が加わっちゃうからさぁ大変。どこまでも異星人達に振り回されていく人類が描かれている。とはいえ、異星人の方も野蛮で非効率な人類に振り回されてる感じも面白い
 構図としてはロイズ VS 救世軍 という中央政府VS地方ゲリラ的な戦いが進行しているのだが、その影ではオムニフロラ、ノルルスカイン、カルミアンという3つの種族が蠢いている。ただみんながみんな自体を把握できていないのが不幸。ノルルスカインは相変わらず退廃的でヤル気ないし、オムニフロラは統一すっぞとヤル気だしてるけどもノルルスカインに意識取られすぎ、カルミアンはミスチフとノルルスカインの区別ができていないようで、尚且つコミュ不足が祟って場を混乱させる一方。まぁ結果的にミスチフに乗っ取られたロイズを打倒しようとしてるから、目的には合致してるのかもしれない。
 何だか何が書きたいか分からなくなってくる。
 それにしても、ロイズが完全にミスチフの支配下にあったり羊飼い連中がノルルスカインのし徘徊と、ああやっぱり的な事が幾つかあったものの。少し前の状態とは完全に入れ替わってるのに驚いた。宇宙時代の最初の方は、ノルルスカインがネットを通じて人類の中枢を監視してて、ミスチフがその間隙をついて周縁部で勢力拡大という感じだったのに、あっという間に乗っ取られたのが悲しい。ノルルスカインまじ無能。
 この分だと、1巻でもまだ嘘というかフェイクが混じってそうで楽しみ。

 次は6巻part3らしく、通算で9冊目だけれども全10巻だと後二冊になってしまう。とはいえ後2冊で風呂敷たたむ気配が皆無だから、まだまだ折り返し地点という感じなんだろうか。いよいよSF超大作になってきた感じがあって面白かったので80点良作!
 



2012年8月25日土曜日

再開


一週間空いてしまったが、明日からまた書こうと思う
一度書かないと続いて書かないなぁと反省

そして以前も書いたが、星雲賞の本を読もうと思う
長編で読んでないのを

去年はいい年になるだろう   山本弘 
ハーモニー   伊藤計劃
図書館戦争シリーズ   有川浩
サマー/タイム/トラベラー   新城カズマ
永遠の森 博物館惑星   菅浩江
彗星狩り 笹本祐一 敵は海賊・A級の敵   神林長平
引き潮のとき   眉村卓
ヴィーナス・シティ   柾悟郎
継ぐのは誰か?   小松左京
さよならジュピター   小松左京

まずこのあたりから攻めようと思う

2012年8月16日木曜日

RDG レッドデータガール


たまたま本屋の平台で並べてあったので買ってみる
今のところは3巻までしか出てないと思いきや、調べると実は5巻まで出ているらしいことに先程きづく。でも新書は高いので、また今度か図書館で借りれるかなぁ
ちなみに、アニメ化もするらしい。そういえば本屋でそんなこと書いて会ったような気もする。アニメ化するから宣伝してたのね

この作者さんは西の善き魔女を大昔に読んだ気がする

    

名前
 RDG レッドデータガール 1~3巻
著者
 荻原規子
ジャンル
 現代、ファンタジー、青春
評価
 80点、良作!

あらすじ
 田舎の神社に住まう、現代人離れした鈴原泉水子(すずはら いずみこ)が主人公。
 運動もダメ、勉強も取り立てて出来ず、友達も少なく引っ込み思案で、パソコンや携帯に触ると謎の現象で故障させてしまう。しかし実はそんな彼女には、彼女も知らない生い立ちや血糖の秘密があって……
 泉水子の学園生活とその周りで巻き起こる伝奇ファンタジー


感想
 3巻までは特別、この本だけのオリジナル!って感じの事柄は出てこないように感じた。
 いい意味で王道伝奇ファンタジー(そもそもこのジャンル自体王道からは程遠いのだろうけども)であり、平凡かそれ以下の主人公とその彼女に眠る才能というか力という設定はテンプレ的だが、やはりテンプレになるだけの魅力を兼ね備えていると思う。
 一日で三冊読み終えただけに文章のテンポはよかった。3巻までだと話の中核?っぽいレッドデータガールな部分には殆ど触れられずじまいなので、どの程度話が進んでいるかは分からないが、取り敢えず主人公の泉水子が前向きに成長している姿は何とも健気で可愛らしい。
 伝奇ファンタジーな設定はいいのだが、反面戦闘シーンなんかはあまりおもしろくなく、色々と演出不足だなぁと思う出来。後2冊も早い内に読みたいと思う。

 

2012年8月15日水曜日

天冥の標6 宿怨 PART1

あああ、気合入れなおさないといかんです
うぅぅ




題名
 天冥の標6 宿怨 PART1
著者
 小川一水
ジャンル
 SF
評価
 75点 良作

あらすじ
 前作に引き続いての宇宙が舞台。
 因縁の少年少女のボーイミーツガールと、ロイズ―救世群のスレ違いいよいよ激動の時代が始まりそうな予感漂う6巻part1。

感想
 あらすじも短いが、内容も前巻とかに比べると濃いわけでもない。
 しかし色々なものが拗れていく様が如実に見て取れる。中学生の頃、若きウェルテルの悩みだかを読んだときに、冒頭のあたりで『人が悪意でもっていざこざになることはまれだ。むしろ、誤解が元でもつれる事が多い』という感じの事が書かれていて少年心になるほどと頷いたのを覚えている。
 そうなのだ。人間は善良とまではいかなくとも、衣食住揃っている限りはそれほど悪しき事を考える人間は多くない。NHKスペシャルでやっていた人の進化でも、協調することが進化の過程で深く刻みついている種族なのである。
 しかしそれが通用するのは、あくまで隣人同士、分かり合える者同士に限られる。知らない相手、それも一方一方に強い劣等感を持っていると、その妄想だけがエスカレーションして篭り成長してしまう。実感が伴う出来事であれば解決のしようもあるが、相手が妄想ならばその根源を退治しようがないのだ。
 それは現実においても同様で、例えば韓国なんかがそういう例だろう。彼らは植民地支配されたという劣等感の赴くまま、日本という抽象的存在への異常なまでの被害者意識を育ててしまい、戦後67年経った今も賠償しろ謝罪しろと喚き続けてしまっている。

 話が大分逸れてしまったが、本作での救世群も似た立ち位置だ。
 最も、彼らの場合は現実の不都合もあり、誤解だけではなく明らかな悪意の介在もある上で、更に被害者意識を育ててしまっているから性質が悪い。1巻の通りにいけば悲惨な未来しか見えないわけだが、ああ彼らにも救いが欲しいなと思う感じでした。part2も読んでから本当の評価かなーと思うpart1で75点良作でー



2012年8月14日火曜日

天冥の標V: 羊と猿と百掬の銀河


続いてもう一冊




題名
 天冥の標V: 羊と猿と百掬の銀河
著者
 小川一水
ジャンル
 SF
評価
 80点 良作!

あらすじ
 この巻は大きく2つのストーリーに分かれている
 一つは3巻・4巻の時代の後で、小惑星で農業を営むタック・ヴァンディというおっさんの話。もう一つは話の大本である、ノルルスカインとミスチフという2つの情報生命体の馴れ初めから、オムニフロラという脅威の誕生とそれに伴う戦争のあらましが語られる。

 前者のストーリーはタック・ヴァンディの元に、地球の女性研究者が訪れる所から始まる。
 彼自身の秘密、娘の秘密、宇宙で農業することの難しさ。そしてレッドリート。幾つかの謎と共に、敵対するミスチフ達の目的が見えてきたりする。
 後者のストーリーは、遂に人類の歴史の影に隠れて戦っていた2つの種族?のたどってきた道のりが語られる。

感想
 前巻とは打って変わってマジメにSFをやっている巻。
 2つに別れてるストーリーは両者とも重要ではあるのだが、やはり目がいってしまうのはノルルスカインとミスチフの方だ。こちらでは遂に、天冥の標世界の裏で戦ってきた黒幕がどういう存在なのかが明らかになる。想像以上に、距離的にもスケール的にも大きかった争いの存在に、正直上手く風呂敷畳めるのかなぁと心配になったりしたが、全10巻と銘打たれた作品ならこのぐらいのスケールでもいいのかもしれない
 異星人をどう描くかというのは映画でも小説でも漫画でも頻出のテーマだが、天冥の標の場合は2つの姿、情報生命体と生態系そのもので描かれている。情報生命体は描き方が違うもののよくある形だけれども、生態系そのものというのはあまりないように思える。
 そして尚且つ、かなりの難敵だという事も伝わってくる。

 知性というのは適応力だ。人類がこの地球で圧倒的な覇者たる地位に登ってきたのも、その柔軟性によるところが大きい。アフリカのサバンナにいたころの人類は、せいぜいスタミナがある程度の雑食の大型生物に過ぎなかった。しかしそれが火を発明し、服を着るようになり、道具を造りだし、家を作るうちにありとあらゆる環境に適応し、あるいは農業に代表されるように環境そのものさえ変えるようになった。
 進化というプロセスが環境への適応である適者生存の法則で動いているわけだが、知性という対応プロセスは進化よりも遥かに遥かに早い。鳥が恐竜から空飛ぶ鳥へと進化した期間は6000万年近くかかっている。しかし人類は、ギリシャのイカロスの神話からほんの数千年たらずで空を飛ぶことに成功した。まさしく圧倒的な早さである。

 だが、この生態系全体を有するオムニフロラは知性による回答プロセスに頼らない。
 彼らはありとあらゆる生物・遺伝子・解決プロセスを有しており、ただ単に答えを出すだけなのだ。そしてそのリソースはどこまでも広がり続けている。知性より早い巨大な生態系、それをいかに退治するかがこの物語のキーになっているのだろう。農家のおっさんの話で会ったレッドリートでさえただ1種で、生態系を変えてしまった。いわんやそれが連続しているオムニフロラをば。
 まさしく絶望的な戦いであり、ノルルスカインは正直もう勝てると信じていないような節さえある。

 そして、オムニフロラ=ミスチフの存在がわかってくると、何もかもが疑わしくなってくるのが常。ロイズ・スカイシー・救世群とあらゆるものが怪しさを増してくる。
 感想が長くなったので今日はここらへんにしておこう。暇があったら追加で、少しずつ物語の靄が晴れてきたのがたまらなく楽しかったので80点 良作!

天冥の標IV: 機械じかけの子息たち


 今日はもう一つ以上感想を書こうと思うけど、その前に天冥の標シリーズの感想を書き終えたほうがいいだろうなー。




題名
 天冥の標IV: 機械じかけの子息たち
著者
 小川一水
ジャンル
 SF・エロ小説
評価
 60点 佳作

あらすじ
 前作Ⅲの舞台のちょっと後ぐらい。
 救世群の少年(今でいうエイズ持ちみたいな)が偉大なるエロ親父によって作られた、ダッチワイフロボットの集まる娼館におとずれる話。ロボットと一緒にセックスの極意を見つけるために試行錯誤していく

感想
 あらすじは少し書きすぎたかもしれないが、大体こんな感じであってると思う。っていうかこれ単体で読めば特に序盤はこのあらすじまんま。後半ぐらいから、偉大なエロオヤジこと師父の謎やロボット軍団、あるいはダダーの痕跡が見えてきたりする。
 しかし、たぶんこの巻が言いたいのは次の巻遂に出てくるミスチフによる融合の気持ち悪さなのだろう。
 分かり合う事、そして交流することと、同化することは全く別の事。異文化・異種族、異なるからこそ面白いのであって、同化してしまえばその面白みはなくなってしまう。うーん確かにごもっともだ。後、初めてが一番気持ちいいって事でいいのだろうか。ファーストコンタクト。まあそういう側面は誰しもあるよね、慣れるとマンネリ的な。どんな面白い小説も、二度三度読めばつまらなくなるし。書いていて思ったが、グローバル化の皮肉でもあるのかなぁ。
 正直感想書いていても何を書いてるのか良くわからなくなってきたが、かといってもう一度読みなおすきにもならない。天冥の標が終わりに近づいてきたときに、今度はじっくり読もうと思う。とにかく何か少し痛々しいエロ小説に思えたので60点・佳作!





2012年8月13日月曜日

天冥の標 3 アウレーリア一統

世間のお休み雰囲気に流されてダレてるなぁ(言い訳。気を引き締めないと
今日はダラダラと三冊本を読んでしまった。感想は明日にでも纏めて
ダラダラと読むのも楽しいのだけれど、いつか書いた通りテーマを決めて何か読もうかなぁ



名前
 天冥の標 3 アウレーリア一統
著者
 小川一水
ジャンル
 SF
評価
 75点 良作

あらすじ
 Ⅱの舞台から数百年。冥王斑と呼ばれたウイルスのパンデミックやらあったものの、無事太陽系への宇宙進出に成功した時代の話。
 時はまさに海賊ならぬ宙族時代。小惑星圏が経済の実権を握る中、ノイジーラント大主教国では肉体改造により真空に適応した《酸素いらず》の国だった。
 海賊狩りの任 にあたる強襲砲艦エスレルのゴスロリ艦長サー・アダムス・アウレーリアは、小惑星エウレカ に暮らす救世群の人々と出会う。 謎の戦艦ドロテア・ワットに繋がる報告書を奪われたと いう彼らの依頼で、アダムスらは海賊の行方を追うことになる。
 少しずつ歴史の影に隠れてきたミスチフが姿を現してくることになる。

感想
 三作目にして一番SFらしい作品かもしれない。
 だが、何か少し設定が無理矢理な気がした。主人公のゴスロリ姿の艦長も、ホモ・レズ放題なノイジーラントの設定も、被害がやべーから宇宙空間での威力兵器の使用禁止も、自然な設定というよりは物語を構成するための無理矢理な流れに見えてしまった。
 とはいえⅠで出てきた酸素いらず(アンチオックス)の連中が出てきたり、ドロテア・ワットでの一悶着、前巻で生まれた救世群のその後が描かれてたりと少しずつ物語が見えてくるのは楽しい。またロイズ非分極保険会社の設定なんかは秀逸だと思った。
 確かに、保険会社というのは特別な存在かもしれない。
 軍隊なら戦争が起きたときに活躍するし、病院も病気になった人がでたときに活躍する。消防隊だって火事が起きたときに活動するけども、保険会社は違う。保険会社は何かを未然に防ぐ事が利益に繋がる。だって保険料払いたくないから。そういう連中が巨大な勢力を構築すれば、世の中を安定させる方向のバイアス、つまり世界警察なるものに一番近いという設定はしっくりときた。
 まぁこの天冥の標におけるロイズは、そう単純な存在ではないようだけれども。
 内容自体は面白く、少しずつ解き明かされていく感じはよかったけれども、何だか腑に落ちない点があったので75点。良作!



2012年8月12日日曜日

天冥の標 2 救世群

昨日に引き続き




題名
 天冥の標 2 救世群
著者
 小川一水
ジャンル
 SF、ウイルスパニック
評価
 90点、名作!

あらすじ
 舞台は現代。日本で医者をやっている主人公は、かつての仲間から太平洋上に浮かぶ島で疫病のエピデミックが起きたときき急遽向かう事に。彼はそこでこの疫病の厄介な性質を知ると共に一人の少女をたすけることになる。
 しかしこの疫病の影には大きな悪意が潜んでいて

感想
 純粋に、疫病が蔓延しパニックに陥りつつも医者達が奮闘する、疫病パニック小説としてもよくできている作品だと思う。シリーズ中唯一の現代を舞台にしてるとあって、他の作品よりとっつきやすく、謎が謎を読んだ1巻はプロローグ的な立ち位置。こちらが真の1巻とでもいうべき作品だろう。
 この話も謎が幾つも紛れているが、1巻で出てきた勢力のうちの2つの由来。救世群とリエゾンドクターの起源が分かることになる。
 しかしそれよりも、この疫病の原因は実は宇宙からの悪意とも言える存在だという事が分かったり、それに対抗する存在も地球にいることが分かったりという、シリーズ全体の軸足が見えてくるのが大きい。更に後の巻である5巻ぐらいから振り返ると、成る程ー!と思えるのも美味しかった
 テンポよく進む上に、ここから現実と別れて天冥の標世界へと進んでいくという標みたいな巻。たぶん今のところこの巻が一番出来がいいので90点!名作



2012年8月11日土曜日

天冥の標


時砂の王と同じ作者の本。全10巻と最初に銘打たれていて
今は、1巻が上下、2巻、3巻、4巻、5巻、6巻part1まで出てる。もうすぐpart2が出るので後2冊なのかな?流石に10巻まではないと思うけども
日本では滅多にないスケールの大きなSF。まずは1巻から

自分でも読んでて頭がこんがらがるのでそのうちネタバレ全開設定を纏めたいなぁ

 

題名
 天冥の標 1 上下
著者
 小川一水
ジャンル
 SF
評価
 70点 良作

あらすじ
 長いし分かり難いのでシリーズ全体と2つに分ける

<天冥の標>シリーズの解説
 時系列で並べるとこんな感じ(5巻)→→→2巻→3巻→4巻→5巻→6巻→→→1巻上下
 なので正直1巻を読んだだけだとちんぷんかんぷんというか、謎が多すぎて意味不明になる。そうはいってもやはり物語の構成として1から読み進めないと、少しずつ紐解かれていく謎についていけないだろう。
 肝心の世界観を説明すると完全にネタバレになるが、簡単に説明すると銀河規模の戦争に巻き込まれてしまった人類のお話(なのかなー?)
 時系列凖に並べたものの、SF的スケールで物語が進むので数百年程度隔ててるのも珍しくない。そのため同じ登場人物が出ることはほぼないが、血のつながりがあったりするのは少しにんまりしてしまう

<天冥の標1>
 1と銘打たれてはいるものの、既刊の中では一番遠未来に当たる作品。
 物語の始まりは、惑星ハーブCに植民した人類の中で統治機構に反発する一族の住まうセナーナという港町で始まる。そこで医者をしていたセアキという男は、あるとき奇妙な伝染病に出くわして、その発生源を調べていく内にイサリという奇怪な生物に遭遇することになる。
 謎が謎を呼ぶ第一作で、圧政を行う領主への反乱の最中もこのハーブCと呼ばれる植民地が余りに謎にみちていることが次々と明らかになっていき、そして最後は……

感想
 まさに謎に塗れているという印象なのが本作。後々説明されることになる固有名詞が満載で、少し速読気味で読んだのもあって2度3度読むうちに新たな発見があった。
 物語の展開としては、圧政を行う領主 VS 反旗を翻す地方勢力という構図があり、そこを主人公の医者のセアキや親友でセナーナの有力一族の息子などが駆けまわるのだが、そこで見えるのは変に現実を意識させる部分と異端な部分だ。後々読み返してみると、それらが上手く扱われているのだが、例えば電気羊なんかは初見では単なる小道具なのか伏線の一部なのかは理解できなかった。
 大きな物語の導入部として、幾つもの謎や伏線を仕込んだのは面白かったけれども、単体のストーリーとしては非常に消化不足であり、展開自体も駆け足で何が何だか分からないうちに終わってしまったというのが感想。良作どまりの70点

 






2012年8月10日金曜日

スタータイド・ライジング

 そろそろ気合イレないと更新が滞りそうな感じで2週間。@2週間で1月だー

 知性化戦争シリーズの一作目。日本ではあんまり知られてないのかな?でもSF界では有名なシリーズだと思います。

 

題名
 スタータイド・ライジング 上下
著者
 デイヴィット・ブリン
ジャンル
 SF
評価
 85点。名作!

あらすじ
 長くなるので<知性化シリーズ>と<スタータイド・ライジング>に分けて

 <知性化シリーズ>
 数百年後の未来、人類は異星人とのファーストコンタクトを経験し銀河種族の一員となった。
 だがこの銀河世界では良きにつけ悪しきにつけ知性化という事が重きに扱われる世界だった。人類にとって良くも悪くも付き纏う事柄となる。
 まず知性化というのは、宇宙にあまねく酸素呼吸種族が野生生物→凖知的種族→従族→主族と経験する階梯で、最初の偉大なる始祖以外はすべて他の知的生命体によって<知性化>されることで凖知的生命体が知的生命体になる輪廻の事である。
 しかし人類はその輪廻から外れた鬼子種族であり、そのために庇護を受けることもなく強大が冷酷な列強種族に脅かされる。ただ一方で、人類はこの銀河世界とファースト・コンタクトを行う前に、チンパンジーと海豚という2種族を図らずも知性化していた。そのおかげで、人類は主族の地位を認められて幾つかの惑星への植民権を得ている。

<スタータイド・ライジング>
 その知性化世界において、人類は天性の航海士であり独特な感性で知られる銀河中もっとも若い知的生命体・海豚達を載せた探検隊を組織する。それによって幾つかの情報や教訓、戦訓を得ようとしたのだ。
 だがその目論見は色んな意味で外れることになる。
 海豚と人類の探検隊は、宇宙の彼方で今まで誰も発見したことのなかった、そして銀河中を揺るがすことになるモノを発見してしまったのだ。極秘裏にそれを処理しようとした人類だが、それは儚くも失敗に終わり、発見をめぐって銀河を支配する覇権的な列強主族との戦争になる。
 本作はその戦争の最中から、逃げまどう海豚・人類の探検隊のお話。

感想
 一作目という事で世界観を読み取るだけでも楽しい。特に多様な生物が面白い。
 例えば海豚という知性に俳句を組み合わせることで人間とは違う意識をもたせたり、逆にまったく人間と遠い覇権種族が妙に現代人的な感性を持っていたりと面白みに満ちている。
 一方で視点が一々変わるのが少し最初はめまぐるしいが、それもすぐ慣れ一つの場面を濃密な描写を堪能できる。

 色々小難しいがストーリーラインは、簡単にいうと人間カッケーな感じのストーリーで、特に難しい哲学もなければ科学的知識も必要ないし、文学的な表現もない(翻訳だからかもしれないが)。翻訳ゆえの読みにくさはついて回るが、濃密かつ創造的な世界観の構築が凄いので85点!名作


2012年8月9日木曜日

悪の経典


先日に引き続き、同じ人の作品。こっちは映画化するんだったかな
確かに映画化向きの作品だと思う。立ち読みで一気に読んだなぁ

   

題名
 悪の教典
著者
 貴志祐介
ジャンル
 サスペンス
評価
 80点、良作

あらすじ
 サイコな殺人鬼である英語教師、蓮見の繰り広げる学園青春サスペンス。
 殺人鬼な蓮見が、次々と巻き起こる学園の問題に血と汗でもって応えていく様が描かれている。明るい学級のために粉骨砕身、血も涙も忘れて(というか知らない)蓮見が奮闘するのだが、生徒達の一部はそんな蓮見の正体に気づいて……

感想
 まずこれを読んでぱっと思い浮かんだのは酒鬼薔薇事件。もっとも自分は小学生程度だったのでリアルタイムではあまり知らず、後になってちらりと事件のあらましを知った程度。しかしそれでも、他の人とは違うサディズムな感性が殺人にまで結びついてしまうのは衝撃的である。前に感想を書いた新世界よりでも、「悪鬼」という感性のずれた存在が描かれていたが、この「悪の教典」ではそこに焦点を当てるというかその悪鬼こそが主人公になっている。
 この小説の蓮見という英語教師は更にサイコな感性を拗らせ、むしろそれを理性的にさえ扱って実社会での問題解決に役立ててしまっているという恐ろしさがある。笑いながら人を殺す姿は背筋がぞくりとした。
 題名では悪の教典とある通り、蓮見は現代社会の人類にとってはまさに悪の権化だ。しかし一方で、彼の視点に立って彼の理屈を正しいとするのなら、彼はまったくの正義である。何を書きたいか自分でも分からなくなったが、つまりは相対的に自分でも悪いことをしているという自覚のある犯罪者と違い、自分にとって正しい事をしている犯罪者だということだ。現実には宗教テロなどがこの類例にあたるかもしれないが、普通人では正当化が必要な事柄をあっさりと飛び越えていく恐ろしさが描かれているように感じた。
 物語は、あらすじで書いた感じに少しずつクラスの歯車がずれていき、それを取り繕うと蓮見が奮起することから更にややこしくなり、最後は破綻へと向かう。最後の最後は更にぞくりとして、まさしく悪たる悪という存在が描かれていて、一気に読んでしまうほど興味深かった。
 面白かったけれども、結構不気味なので80点良作!





2012年8月8日水曜日

レインツリーの国

あんまり読まない恋愛物の小説
図書館戦争書いてる人の作品らしい
といっても図書館戦争は読んだことがないなぁ
知り合いが面白いって嵌ってた気はするんだけれども



題名
 レインツリーの国
著者
 有川浩
ジャンル
 恋愛
評価
 65点 佳作

あらすじ
 主人公はあるときふと子供時分に読んだ本の事が気になりネットで検索してみることに、するとその本の感想が書かれているサイト「レインツリーの国」を発見。自分と同じように子供時分に読んだ人がいることに感激し、そしてついつい熱くなってしまいフォームから自分の感想を添えて送信。
 それから、「レインツリーの国」管理人とのネット上での文通が始まり、そして遂には現実で会うことに。。

感想
 恋愛モノも結構いけるなぁと思ったのが今作。ただちょっと説教臭いとい感じの主人公が苦手かな。行動力もあったりして、普通に大人なのが好きでない。もっとも、そんな主人公の性格のおかげかうじうじしている期間は短く、さくさく進んでいくので読みやすい。
 そして本作のもう一つのテーマでありネタバレでもある、聾唖者(耳が聞こえない、あるいはほとんど聞こえない人の事)と一般人の恋である。ある意味、身分違いの恋やら障害を乗り越えての恋愛はありがちなテーマであり、これもその互いの認識を埋めていく作業を見ると似たようなものを感じた。コンプレックスは、コンプレックスと自分で認識するがゆえにコンプレックスであり、他の人にとっては案外なんでもなかったりする。
 そしてもう一つ興味を惹かれたのは聾唖者にも二種類いて、生まれた時分から聞こえない人と生まれた時は聞こえていて事故や病気のように後天的に聞こえない人がいることだ。確かに普通に暮らしていると、障害者というラベルで一括りにしてしまいがちだが、彼らにもそれぞれの事情がありコミュニティがあるのだと切実に感じた。
 そんな二人の恋愛だが、基本的には大した障害もなく進んでいく。最大の敵はココロのもちようという感じでもあるのだが、何だか二人共小難しい事考えながら付き合ってるんだなぁという感想も残った。
 うーんいつもに増して感想がgdgdになってしまった気がする。やっぱりこの小説でもそうだけど自分の考えを纏めるのも伝えるのも難しい事なのね。



2012年8月7日火曜日

新世界より

4,5年前ぐらいに読んだ小説。
ちょっと調べたらアニメ化するらしい。まぁ映画化するよりはマシかなーと思うけど
内容に比べると随分幼い感じだったけど大丈夫なんだろうか
日本SF大賞受賞作




題名
 新世界より
著者
 貴志祐介
ジャンル
 SF(かなー?)、青春モノ(かなー?)
評価
 90点 名作!

あらすじ
 少しあらすじから外れてしまうが、自分が読み始めたときは裏表紙のあらすじ(あったかなー?)は読んでいないので、ぶっつけ本番で読み進める事になった。
 最初は、立ち読みでさほど集中していなかったので速読気味だったのも影響したのが、印象としてはこれSF?伝奇ものとかそういうのじゃね?という感じだった。何故なら、そこに描かれているのはさして現実と大差ない街とそこにクラス少年少女、そして悪鬼や業鬼と呼ばれる存在だったからだ。しかし少し読み進めるだけで何かがオカシイことに気づく、端々に異常が現れてきたのだ。その代表格が呪力でありハゲネズミ。そしてこの2つは、この後の物語の中心を為す事になる。
 まだこの世界の成り立ちを知らぬ少年少女の視点と同じくして進んでいく本作は、逆に今と彼らの今の違いが如実に見える所から、その世界の姿が浮き彫りになっていく。

感想
 長い本で、どうあらすじを書くかが難しくこんなのになってしまった。
 感想はといえば、大きく分けて2つ。一つは練りこまれた世界観と、テンポのいい物語。
 特に世界観の方は、かなり早いテンポで情報が明らかになっていくのだが、謎が謎を呼ぶというか、知れば知るほど情報が欲しくなる感じで、最後の最後で愕然とした情報が提示される。もう少し丁寧に読み進めていれば予想できたのかもしれないが、作中でもあったがハゲネズミという人間臭くありながらも人外の容貌をしているがゆえに騙されてしまったのだ。
 また秀逸なのは、社会の成り立ちの下りだ。
 自分たち人間が動物の1種であることを、今までも分かってはいたもののやはりどうしても特別だと思い込んでいた気がする。でもこの本であったように、社会の複雑さによって特別という幻想のヴェールを被せられているだけで、現実にはそう動物の築くそれと大差ないのだ。そしての大差ない性質を、神の力を手に入れた事によって顕にさせられてしまうというのは、何だかこの小説世界のものすごい皮肉が見えてしまう。つまり人が無力な存在であるからこそ偉大な文明を築き上げたが、人が偉大な力を手に入れた末に文明を社会を崩壊させてしまった。

 そして物語の方だが、有体にいって人間側に魅力的なキャラクターは存在しない気がした。
 みんな達観してるか考えが浅いかの二通りで、むしろバケネズミ側に魅力的なキャラクターが多く存在していたように思う。ゆえに物語が最後に近づくにつれて盛り上がりを見せたと思う。
 また悪鬼と業鬼という2つの凶悪な存在を前半で提示することによって、物語全体をミスリードしていったのも秀逸。最後の最後まですんなりと読み進めてしまう面白さがあった。
 特に世界観の描写が秀逸でぐいっと引きこまれたので90点。名作!

2012年8月6日月曜日

イリーガル・エイリアン

今日も朝から、しかしSFだらけになってきてしまった
 明日は少し趣向を変えるかなぁ。

 この本は単純に説明するとSF×裁判モノ。
 基本的にSFってのは舞台設定や小道具にちょっと突飛だけ屁理屈をくっつけたのを使いますよって前置きなので、SFと一口にいってもミステリーや恋愛もののようにストーリーラインまでは固定されない。それこそコテコテの恋愛物もあれば、まったく別視点の小説もある。ただ共通していえるのは、現実ではない突飛でありつつも面白い世界観の構築といった点だろうか



題名
 イリーガル・エイリアン
著者
 ロバート・J・ソウヤー
ジャンル
 SF
評価
 80点 良作

あらすじ
 人類の初めてのエイリアンとのファースト・コンタクト。4光年あまり離れたαケンタウリに住むトソク族が飛来したのである。友好的な彼らとのファーストコンタクトは順調に進むがあるとき事件が起きる。それはトソク族の滞在する施設で惨殺肢体が発見されたのだ。
 彼の裁判の中で段々と明らかになっていく事実。殺人事件の真相、そしてトソク族の本当の目的とは……

感想
 まず読み始めと読み終えたときのトソク族のイメージは一変する。というか登場人物各々の印象も変わっていく。
 その点で面白いのは、トソク族がまったく人間に似ていない異星人だという点だ。日本のSFでは大抵エイリアンといえば、知性のない化け物かはたまた人類タイプのが多いが、その点このイリーガル・エイリアンで出てくるトソク族はまったく人類とは異なっている。そしてその彼らの生態が少しずつ裁判の中で明らかになっていく過程はまさにSFの醍醐味だと感じた。
 そして尚この小説を興味深いものにしているのは、人間から見たエイリアンだけではなくエイリアンから見た人間の姿も描かれているという点だ。彼らの思考が少々人類にそっくりだという点はひっからないでもないが、宗教に近いものが存在していたり実は内部でも対立があったりというのも興味深い。そしてその謎が少しずつ解き明かされていく様はミステリーとしての醍醐味だとも思う。

 そういう意味では、物語の端々から著者の価値観。多少日本とは違う西洋的な、アメリカ人的な感覚がにじみ出ている。まぁ対して違和感があるわけではないが、文章を通じてそういう違った価値観に触れられる(あるいは触れたきになる)のは思い込みにしても興味深いと思う。
 全体として非常に面白かったが、表紙がグロいのと少々のとっつきにくさがあったので80点。良作だと思う

2012年8月5日日曜日

ルナゲートの彼方

自分の感想を読みなおしてみると、ひどく拙いことを実感。自分の感想と解説の境目が難しい

 この本は米国のジュブナイルSFノベルの大御所ロバートAハインラインの作。彼の作品は割りと読んでいるが、どれも高水準で安定して楽しめる。その中から特に目立った作品というわけではないが、手元にあったのを一つ。



題名
 ルナゲートの彼方
著者
 ロバート・A・ハインライン
ジャンル
 SF
評価
 70点 良作

あらすじ
 恒星間ゲートによって、瞬時に惑星間を行き来する時代。
 両親の反対を押し切って主人公ロッドは、上級生サバイバルテストに参加するために十数名のクラスメイトと共に未開の惑星へとワープすることになる。しかしワープした彼らを待っていたのは、ゲートの事故による長い長いサバイバルのための長い長い戦い。

感想
 SF版15少年漂流記といったところだろうか。
 サバイバルテストのためのワープ、事故による漂流、何とかしての生存、仲間たちと協力しての奮闘。そして少しずつ生存事情を改善する様、少年少女の共同生活にありがちな恋模様など、いわゆる漂流ものの醍醐味を捉えていて面白い。
 しかし個人的に一番心に残ったのは最後の漂流生活が終わった後である。

 大人たちが助けにきたことで、少年少女が築きあげたコミュニティが崩壊し、そして現実世界へと立ち返っていく中で主人公が取り残される姿である。何だか夏休みが終わってしまって、自分は宿題が終わってなくまだ休み気分が抜けきってないのに友人はいつのまにか宿題を終わらせ学校に適応してしまっている。そんな姿を見せつけられてしまう気がする。
 正直内容は要鉄を抑えていて面白いのだが、個人的には少し夢のないラストに興醒めだったので良作どまりかな。いやでも、ああいうラストでなければ心に残らなかったかもしれないので、やはりああいうラストだからこそいい作品なのかもしれない。でも当時の自分の寂寥感に70点。


2012年8月4日土曜日

時砂の王

今日はもう一冊感想かければなぁと思う。一週間続いたのでほっと一息
今回の著者の小川一水さんは、導きの星からのファン(多分)。個人的には風呂敷の広げ方(世界観の構築)には定評があるけど畳み方(締めの展開、オチ)に難ありな印象。でもこの小説は最後まで上手く纏めていると思う。ちなみにハリウッド映画化するとかしないとか、まぁ多分ハリウッドにありがちな映画化の権利だけ獲得して終わりなパターンだと思うが



題名
 時砂の王
著者
 小川一水
ジャンル
 SF、タイムトラベル
評価
 70点、良作

あらすじ
 時を渡って繰り広げられる人類の生存をかけた戦争のお話。
 とはいえ初めから負け戦濃厚で、地球を奪われつつも外惑星系に根城を築いて反撃しようとするところから始める。その一貫として、発明されたばかりの時空転移を使い過去に部隊を送り込み有利に戦争を進めようとする。しかし、同時に時空転移が発明されたにも関わらず、現在の時空で人類が敗北しつつあるのは遠くない未来にこの世界が滅びる(=過去に軍を送れない=今の世界に未来軍が着ていない)ことを暗示していた。
 その未来を変えるべく(というよりは滅びない未来の世界へと分岐させるべく)奮闘するが、そこは流石に人類。滅亡の危機でも主導権争いに終始して失敗を重ねる。
 最終的には戦略を転換し、近い未来から改変していくのではなく遠い未来から虱潰しに時間を防衛することになる。主人公のメッセンジャーO(未来から過去へのメッセージを運ぶものたち)はその方針に反対し、時間を1つずつ戻ることでより多くの人々を守ることを決意する。
 しかし人類に勝利は訪れず、時間軍(勝利を収めた後の世界で創出され、過去へと送られるはずの軍)の創出は行われず終にメッセンジャーOは過去から虱潰しに敵と戦い続けた本隊と合流することになる。
 場所は日本、邪馬台国の時代。人類の天敵との最終決戦が始まろうとしていた。

感想
 どこか悲壮感漂うタイムトラベルもので、結構駆け足というかテンポよく進む。もう少しながければ、歴史を辿っていったのだろうがそういう要素はあまりない。
 とはいえ時を辿り、敵の正体を知ることで少しずつ絶望の戦いであることが明らかになる主人王:メッセンジャーOの足掻く姿や、そんな彼と歩み共に戦うことになる邪馬台国の少女壱与との共闘がメインに据えられていて、物語の流れも(未来→壱与の時代→近未来→壱与の時代2)という如く、交互に描かれている。

 ただ少し腑に落ちないのはやはりラスト。
 ネタバレになるが主人公が死んだ後で、奮起した壱与の元へ時間軍が戻るシーンは中々の矛盾を感じた。説明では戦況が有利に進めば進むほど、未来でも人類が発展し技術進歩が進み最終的には人類軍の創設に繋がるとの事だったが、ラストのシーンでメッセンジャーOが死ぬあたりはとてもじゃないが人類側の戦況は最悪で、時間軍が来なければ敗北必死だったのではないかと思う。
 とはいえ全体としては短い割には纏まっていると思う。ただし前述の感想通り、タイムトラベルものとしてのツボは抑えられてない感じ。